広島地方裁判所 昭和42年(行ウ)40号 判決 1971年10月12日
広島市小町三番三〇号
原告
株式会社太陽商会
右代表者代表取締役
吉田義之
右訴訟代理人弁護士
内堀正治
広島市大手町四丁目一番七号
被告
広島東税務署長
竹本実
右訴訟代理人弁護士
三宅清
右指定代理人
片山邦宏
同
井上正雄
同
広光喜久蔵
同
高橋竹夫
同
久保義夫
同
加藤嘉久
同
西本哲夫
右当事者間における行政処分取消請求事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告の請求は、いずれも棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告
(一) 被告が、原告に対し昭和四一年一二月二七日付をもつて原告の昭和四〇年六月一日から同四一年五月三一日までの事業年度における所得金額を金一、七八六万八、九五一円と更正した処分は、これを取消す。
(二) 被告が、原告に対し昭和四一年一二月二六日付をもつて原告の青色申告書提出の承認を昭和四〇年六月一日から同四一年五月三一日までの事業年度以降取消した処分は、これを取消す。
(三) 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決。
二 被告
主文同旨の判決。
第二主張
(原告の請求の原因)
一 原告は、自動車部品販売等を業とする法人であり、被告から青色申告書提出の承認を受けていたものである。
二 原告は、被告に対し昭和四〇年六月一日から同四一年五月三一日までの事業年度(以下「係争事業年度」という。)の所得金額を金七三〇万九、一〇四円であるとして法人税の確定申告をした。
ところが被告は、昭和四一年一二月二六日付で原告に対し法人税法一二七条一項三号に該当するとして右事業年度以降の青色申告書提出の承認を取消す旨の処分をなし、さらに、翌二七日付で右事業年度の所得金額を金一、七八六万八、九五一円と更正する旨の処分をし、右各処分は、その頃原告に通知された。
三 原告は、右各処分を不服として昭和四一年一二月二八日、被告に対し異議申立てをしたが、棄却されたので、昭和四二年四月一二日広島国税局長に対し審査請求をしたが、同年一〇月二八日付で、これも棄却された。
四 しかしながら、原告には法人税法一二七条一項三号違反の事実はなく、また、原告の係争事業年度における所得金額は確定申告のとおりであつて、被告の認定した額は過大なものである。
従つて、原告は被告に対し、右各処分の取消しを求めるものである。
(被告の答弁)
請求原因一ないし三項の事実はいずれも認めるが、同四項の事実については争う。
(被告の主張)
一 被告は、係争事業年度に関する原告の法人税確定申告に基づいて所得調査を行なつたところ、原告の右申告には、大阪市城東区茨田浜町所在の訴外双葉商会こと桜井健市の名称を使用して金九〇〇万八、八四七円の架空仕入れを計上していることが判明した。
すなわち、原告は、係争事業年度における帳簿書類の一部に右取引を仮装して記載していたものであり、右事実は法人税法一二七条一項三号に該当するものであるから、被告は、係争事業年度以降の原告の青色申告書提出の承認を取消すとともに、右架空仕入額については損金算入を否認し、なお、右青色申告書提出承認の取消しに伴ない、損金算入されていた貸倒引当金価格変動準備金も否認することとなつた結果、申告所得金額にこれら金額を加算し本件更正処分となつたものであり、その計算内容は別表のとおりである。
二 被告が桜井からの仕入金額九〇〇万八、八四七円をすべて架空のものであると判断したのは、次の理由によるものである。
(一) 桜井に関する原告代表者の主張は一貫性がなく、桜井が実在するものであることを証明するものがない。
(二) 桜井から仕入れたことを証するものとして原告が提出した出荷明細書(甲第九号証の二、第一三号証)は仕入先及び仕入年月日が記載されているはずの上部の欄が切断されており、右出荷明細書の一部には、昭和三六年当時の原告代表者の日付つき決裁印が押印されたものや、記載されている商品の単価が昭和三六年当時の単価であるものがあり、仕入商品の品目の配列順序が、原告が昭和三五年六月一日から同三六年五月三一日までの事業年度の確定申告書とともに被告に提出した棚卸表の記載と同一順序のものがあること、右出荷明細書の様式が訴外オリオンパーツ商会の昭和四〇年以前の納品書と同一様式であることと等からして、この出荷明細書は、過年度訴外オリオンパーツ商会から送られたものを改ざんして係争事業年度のものとして使用したものと考えられる。
(三) 原告は、桜井に対し計四〇〇万円の支払いをしている旨買掛帳に記載しているが、これが事実桜井に支払われたことを証明するものはなく、被告が原告代表者に糾したのに対し、代表者個人の定期預金及び借入金で支払つたと弁解しているが、株式会社組織になつている原告の仕入代金を代表者個人の金員で支払うことは、極めて不自然なものと考えざるを得ない。
(四) 桜井からの仕入れは、総勘定元帳には係争事業年度の最終日である昭和四一年五月三一日一括して計上してあり、帳簿整理上極めて不合理である。
(被告の主張に対する原告の答弁並びに反論)
被告主張の事実は、確定申告に別表記載の引当金等の損金算入があつた点を除きいずれも否認する。
なお、二項の(二)で被告が主張する出荷明細書に過年度の日付ゴム印が押捺してあるとしても原告のしるところでなく、右はそもそも桜井からの正規の納品書であるとして提出したものではなく、単なる内訳表として参考の目的で提出したものである。
原告は桜井からの仕入代金のうち、金五九九万九、八八〇円は現金で支払い、残額金三〇〇万八、九六七円は、桜井が金三〇〇万円に減額のうえ、訴外寺沢商会こと寺沢英雄に債権譲渡したので右寺沢に金三〇〇万円を支払つている。
第三証拠関係
一 原告
甲第一ないし第八号証、第九号証の一、二、第一〇、一一号証、第一二号証の一ないし三、第一三号証、第一四号証の一ないし三、第一五号証の一、二を提出し、証人池川茂雄、同寺沢英雄の証言並びに原告代表者本人の尋問の結果を援用し、乙第一号証、第三、四号証、第九号証の二ないし四の成立は、不知であるが、その余の乙号各証の成立は認めると述べた。
二 被告
乙第一号証、第二号証の一ないし三、第三ないし第五号証、第六号証の一、二、第七号証の一ないし三、第八号証、第九号証の一ないし四、第一〇ないし第一二号証を提出し、証人武田博の証言を援用し、甲第五号証は郵便官署作成部分の成立を認めるがその余の部分の成立は不知、甲第九号証の一の成立は否認する。甲第一三号証、第一四号証の一、二、第一五号証の一、二の成立は認める、その余の甲号証の成立はすべて不知と述べた。
理由
一、請求原因一ないし三項の事実(係争事業年度における原告の法人税確定申告、被告の原告に対する青色申告書提出承認の取消処分及び法人税更正処分並びに右各処分に対する原告の不服申立に関する経緯)は、いずれも当事者間に争いがない。
二、被告は、原告の確定申告のうち、桜井健市から金九〇〇万八、八四七円に相当する自動車部品を仕入れたとする部分が架空仮装のものであるから、本件各処分をなした旨主張し、原告は、事実桜井から右金額の仕入れをなしたものであると主張するので、以下判断する。
(一) 桜井健市の実在性について
1 その住所地についての原告の申立
成立に争いのない乙第六号証の一、二、証人武田博の証言により成立の認められる乙第一号証、右証言並びに原告代表者本人尋問の結果によれば、原告は調査の段階で被告に対し、桜井の住所地は「大阪市東淀川区十八条町三―一三六」(桜井から原告宛に出された納品書といわれる甲第九号証の一記載の住所地に同じ)である旨申立てたので、被告がその住所地の隣保会(橘会)に、桜井が実在しているかどうかの照会をしたところ、桜井に該当する者は居住していいない旨の回答があつたこと、また同じ調査の段階で、原告代表者は桜井は、広島県甲奴郡上下町出身の者であると主張したが、被告の調査したところによれば、原告代表者の申立てた者は、すでに昭和二〇年八月六日に原爆により死亡しており、他に桜井に該当する者は見当らなかつたことが認められる。
右のとおり、原告の申立によつては桜井の住所地を確定できないところ、この点につき、原告代表者は、本人尋問の結果において、「原告は昭和三七年頃から双葉商会という商号を使う桜井健市と取引を始めたが、同三九年一月頃から継続的取引をするようになり、以来、原告は桜井から「ホンダ純正特価品」(本田技研工業株式会社の下請工場が製造した自動車部品で、本田技研工業株式会社に納入すべきものを超えて製造したもので他の部品販売業者に横流ししている物)を購入してきた。桜井は、当時、九州、中国地方を行商して右自動車部品のセールスをしており、原告との取引も桜井が原告の事務所を訪れて注文をとり商品を送つてきていた。そして、右の取引において原告は仕入れるのみであつたから、桜井の事業所を確認する必要がなく、取引は円滑に進められていた。」
と述べている。
しかしながら、原告と桜井との取引において、原告が仕入れる側に立つ者であるとしても、その取引の額が年間九〇〇万円を超える多額なものであること、取引の性質上仕入れた商品がホンダの純正品であるかどうか検査する必要があり、不良品の返品をしなければならない場合もありうると考えられること及び代金支払いの点等を考慮すれば、原告においても桜井の住所地を確認しておく必要があることは自明の理であり、原告自身その住所地を確定して申立て得ないことは極めて不自然かつ不合理であるということができる。
2 右実在性についてのその他の証拠
甲第一二号証の一、二、三(約束手形)の存在、証人池川茂雄の証言によると、大阪市城東区茨田浜町一五〇六に双葉商会なるものが存在した事実のあることがうかがえるが、しかしそれは小谷潤二の経営にかかるものである。もつとも甲第一二号証の一と三に桜井なる認印があり、あるいは右双葉店会に桜井なる者がいたかの如く見られるが、右手形上桜井なるものの記名は全く顕れておらず、そして右認印は金額の末尾に押捺するなど通常手形上押捺する必要のない個所に押捺されているもので、あるし、証人池川茂雄の証言からいつても、手形作成当初より桜井の認印があつたかは疑わしいのであり、成立に争いのない乙第二号証の三によると、昭和四一年七月一八日原告が「大阪市城東区茨田浜町一五〇六双葉商会桜井健市」宛に差出した書留通常郵便物は、受取人があて所にいないということで返送されていることが明らかであるし、彼此総合すると、右約束手形は原告の手に入つた後、原告の手によつて桜井の認印が押捺された疑いが強い。したがつて右約束手形の存在により桜井なる者が実在したとはいえない。
甲第一、二、三号証も原告において勝手に作成できるものであるから(甲第三号証には封筒がない。)、これを以て桜井の実在性を証するものといい難い。かえつて甲第三号証は本人自筆の形をとりながら桜井健一としるされ(甲第四号証は同一筆跡でありながら桜井健市となつている。)、本人が自己の氏名を誤つて書くことは考えられないので、誰かがために作成したものの疑いが強い。甲第一一号証も桜井の実在性を証する資料となし難く、その余の甲号証も次の(二)(三)で触れるようにすべて桜井の実在性を証する資料といえない。双葉商会に桜井なる者がいたかの如くいう証人池川茂雄、同寺沢英雄の証言も極めて曖昧なところがあり、経営者であるか使用人であるか、双葉商会の所在はどこかなどについて原告本人尋問の結果ともそごうする点があり、到底桜井なる者の実在性を証するに足るといえず、他にこの点を証するに足る証拠はない。
3 以上の次第で桜井健市なる者の実在性を証明することができず、むしろその存在は疑わしいといわざるを得ないのであり、この点は原告と同人との取引が架空のものであることを推認させる有力な証拠であるということができる。
(二) 仕入関係資料(買掛帳、納品書、納品メモ等)について
原告は桜井からの仕入れ商品及び金額を証明するものとして、買掛帳(甲第一〇号証)及び納品書(甲第九号証の一―後述の領収書を除く)を提出しており、なるほど、右二つの記帳はほぼ合致していると認められる。しかし、買掛帳に記載されている仕入商品の配列順序及び単価を、成立に争いのない乙第五号証により認められる原告の昭和三六年五月三一日現在の棚卸表の記載と対比してみるに、買掛帳の記載のうち、四九頁上より一四行目から六三頁の終りまでの記載(但し四九頁下より一四行目から八行目まで、五三頁下より九行目から五四頁終りまで、及び六一頁下より三行目から六二頁下より五行目までは除く)は、右棚卸表三九頁表左側冒頭から四五頁表右側上より四行目の記載の順序を逆にした配列になつており、その大部分の単価が両者において同一であり、また、買掛帳四二下より六行目から四四頁下より八行目までと、四五頁下より六行目から四八頁上より一三行目までの記載と、棚卸表四五頁表右側五行目から四七頁裏右側冒頭までの記載も同様の関係になつていることが認められる。
右のように、昭和三六年五月三一日現在の棚卸表の記載と係争事業年度における仕入れを記帳している等の買掛帳の記載の順序が右の関係になつていることは極めて不自然であり、成立に争いのない乙第七号証の三並びに証人武田博の証言によれば、自動車部品の価額は、昭和三六年五月三一日当時に比して係争事業年度においては低下していることが認められ、前述のように係争事業年度の買掛帳に記載されている部品の価格が昭和三六年五月三一日現在の棚卸表に記載されている価格と同一であることは不合理である。更に右買掛帳はほぼ一年間の取引を記帳したとされながら、同一人が全く同じ調子で記帳していて一度の機会に何かのために作成された疑いが強い。
また前掲甲第九号証の一の納品書も、右買掛帳の記載と同様に原告において偽造された疑いが強いものと思われる。
証人武田博の証言によると、甲第九号証の二および甲第一三号証は異議申立の手続では原告において桜井より原告に対する出荷明細書ないしは納品書であると主張されていたものであることが明らかであるが(本訴においては原告代表者はその本人尋問の結果において、右は桜井より送られたものであるが納品メモに過ぎず異議申立の手続においても単に参考として提出したものという。)右甲第九号証の二、第一三号証は納品元、納品先、納品月日が記入される筈の上部が切断されており、かように一部切断した不備不体裁な書類が取引に使用されているとは到底考えられず、右証言により真正に成立したと認められる乙第四号証(オリオンパーツ商会納品書)と右甲第九号証の二、第一三号証と対比して検討すると、切断してない部分の形式大きさ文面とも同一とみられ(但し甲第一三号証の一部には文面の若干異なるものもある。)、甲第九号証の二、第一三号証は大阪市福島区福島南三丁目三一番地訴外オリオンパーツ商会より原告に対する過年度の納品書を利用した疑いが強いというべく、むしろ原告において作為した形跡をうかがわせる。
右の次第で、原告が真実桜井から自動車部品を仕入れていることを証するものとして提出された買掛帳、納品書および納品メモはいずれも信用し難いものといわざるを得ない。
(三) 桜井に対する弁済について
右買掛帳(甲第一〇号証)には、原告は、桜井に対し、係争事業年度の仕入れ商品代金として昭和四〇年七月一四日に金五〇万円、同年一〇月一六日に金五〇万円、同年一一月二九日に金九〇万円、同年一二月二六日に金六〇万円、翌四一年二月一二日に金一五〇万円の合計金四〇〇万円を支払つている旨記載されており、甲第九号証の一の領収書は右に符合し、原告代表者は、本人尋問の結果において、右の支払いの一部は、自己名義の五〇万円と一〇〇万円の定期預金証書各一通で支払い、その余は個人の現金で支払つており、右現金で支払つた部分の一部は、原告代表者が他から個人として借入れた金員によるものであると述べている。
しかし、成立に争いのない甲第一四、第一五号証の各一、二(定期預金証書)によるも、右預金は満期ののち、金五〇万円については昭和四一年九月二一日、金一〇〇万円については同四二年二月一〇日に原告代表者が個人として引出していることが認められるのみで、右金員が桜井に渡されたことを証明するものではなく、甲第一四号証の三(委任状)も、かような書面が金融機関に差入れたか極めて疑わしいといわざるを得ず、したがつて、金五〇万円の定期預金が桜井によつて引出されたことを証明する資料とはなし難い。更に、会社の買掛金を個人の定期預金や現金で支払うということは極めて異例なことであり、会社の計理上現金の出所の証明ができないための弁解である疑いが強い。
右の事情と前記二の(二)仕入関係資料についての判断で示した事情を併せ考慮すれば、甲第九号証の一の領収書(五枚)と買掛帳の支払いの記載は、いずれも原告において勝手に作成記入した疑いがあり、原告から桜井に対する弁済を証明するものとはなし難い。
また、原告は、仕入代金のうち右を除く金三〇〇万円は桜井が債権を譲渡した訴外寺沢英雄に支払つた旨主張し、甲第四ないし第八号証並びに証人寺沢英雄の証言及び原告代表者本人尋問の結果は、これに副うが如くである。しかし、桜井ないしは訴外寺沢英雄より送られたとする甲第四、第七、第八号証にはいずれもこれを容れた封筒の提出がないので、勝手に年月日を記入して後日作成された文書である疑いが強く、甲第六号証は原告名義の書類であつて、右同様後日作成された疑いがあり、また、訴外寺沢英雄から原告に対し内容証明郵便で催告した甲第五号証は、昭和四二年七月三日付であり、これは本件課税処分に対する原告の異議申立が棄却されたのちに当るので、桜井の実在性が疑わしい等その余の事情と併せ考えると、異議申立棄却の対策として、ために交換された書類である疑いが強い。
以上の次第で桜井が原告に対する債権を訴外寺沢英雄に譲渡したとする事実は認め難いところであり、右弁済の主張も容れることはできない。
(四) 総勘定元帳への計上について
成立に争いのない乙第七号証の二、証人武田博の証言および弁論の全趣旨によると、原告は桜井との取引については係争事業年度末である昭和四一年五月三一日に一括して借方商品九〇〇万八八四七円、貸方買掛金五〇〇万八八四七円社長仮受四〇〇万円と仕訳のうえ総勘定元帳に計上したことが明らかである。前顕の買掛帳や納品書において、取引はほぼ一年間に繰返しなされたとされるものであり、右の如き帳簿の整理は極めて異常なものであつて、帳簿に架空計上した疑いが極めて強い。
三、以上説示したとおり原告が桜井から係争事業年度に金九〇〇万八八四七円の自動車部品を仕入れたことを証明するものはなく、却つて右仕入れは原告の仮装したものであることが容易に推認される。
原告はその帳簿に右仕入れを仮装して記載したのであるから、被告が原告に対し法人税法一二七条一項三号に該当するとして原告の青色申告書提出の承認を取消した処分は適法である。
そして、係争事業年度の仕入総額が前記金額を僅かに超える程度であるならば、原告が営業を継続している以上、桜井からの仕入れを否認しても他にこれに見合う仕入れがある筈だとの議論もあり得るが、証人武田博の証言によれば仕入れ総額は一億数千万円存することが明らかであるので、かような議論も成立せず(原告も他に仕入れがあるとは主張しない。)、桜井からの仕入れが仮装である以上その取引額をそのまま否認することはなんら不合理でない。
更に、原告が右係争事業年度における法人税確定申告において、貸倒引当金として八二万三〇〇〇円、価格変動準備金として七二万八〇〇〇円を計上していたことは弁論の全趣旨により明らかであるから、右青色申告書提出の承認の取消しにより右引当金等の損金算入が否認される結果となる。そこで、別表のとおり、桜井からの仕入額を否認し、右引当金等の損金算入を否認してなした原告の係争事業年度の所得金額が一七八六万八九五一円であるとした本件更正処分も適法である。
したがつて右各処分の取消しを求める原告の本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹村寿 裁判官 高升五十雄 裁判官 井上郁夫)
所得金額の計算
<省略>